「絶対に保育士にはならないぞと心に決めていたのに」。
保育士岩田竜馬さんは、昔を振り返ってそう言った。「子どもは好きでも嫌いでもなかったのと、他のコースはお金がかかりそうだったから」。高校のコース選択で幼児教育を専攻したものの、ピアノ伴奏や童謡、手遊びが嫌でしょうがなかったらしい。けれど、実習で通った保育園、アルバイトをした学童保育で出会う子どもたちが可愛くて、保育の道を進もうと決めた。

竜馬さんが現在働いているのは峰山乳児院。さまざまな事情で家族と別れて暮らす子どもたちが、家として過ごす場所だ。朝、起き抜けのおむつ交換や排泄トレーニングに始まり、ご飯を食べたら遠くの公園に車で出かけることもある。お昼寝を挟んで遊び、お風呂と夕ご飯の後にもちょっぴり遊んでから寝かしつけて、一日が終わる。

朝がやってきて夜が過ぎていく。泣いている子をあやしつつ・こっちで喧嘩の仲裁をしながら・あっちのひっくり返ったおもちゃ箱を遠目に見ていたら・そっちでトイレを我慢している子に促してみるけど行きたくないって断られていたら・泣き止んでいた子がまた泣き始めて・・・大人だって、保育士だって、竜馬さんだって泣きたくなる。その瞬間、保育士スイッチが発動する。「よし、抱っこしたげな!」。泣いている子には何が嫌だったのかハッキリと聞く。「これが嫌だった?こっち?これか~!ごめん!」。原因を取り除いてあげて、こっちの喧嘩を仲裁したら・とりあえずあっちのおもちゃは放っておいて・そっちで次はトイレ行こうぜと声をかける。朝がやってきて夜が過ぎていく。

心が折れそうになる局面を支えてくれるのは上司だと教えてくれた。自分に落ち度がある失敗をした時も、まず気持ちを聞いて「そんな気持ちにさせてごめんよ」と言ってくれる存在。そんな風に自分もなりたいと思うから、目の前の子どもの「イヤ」に向き合って気持ちを聞く。「ここは、こうせなあかん」を決めてしまったら子どもたちに負担がかかるから、子どもの気持ちと考えを尊重したい。言葉のバトンは、子どもたちへ引き継がれていく。

そして、数少ない男性保育士である自らの役割も見出してきた。「乳児院で育つ子どもは男性を怖がることもあって、僕で慣れてもらえたらと考えています。遠出する車の運転も得意なので自分がシフトの時に合わせて計画したり。子どもが大きくなっても高い高いやおんぶの力仕事ができるのがいいところかな」。けれど、男性だから出来ないとは言われたくなくて、不得意だったピアノ伴奏は家でも猛特訓を重ねた。

京都市内の保育園で三年、丹後に戻って六年を子どもたちと共に過ごしてきた。「子どもが好きかは分からないけれど」。繰り返す竜馬さん。出会ってきた子たちを大切に思えるこの仕事は、悪くないのかもと最近になって考える。「誰かを抱きしめること。手をにぎること。この仕事でなければ、なかなかしないと思うんです」。

彼は、子どもだから好きなのではなくて、出会った子ども一人ひとりを好きになってきた。愛おしいと思える関係を、今日も重ねていく。

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